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第三の聴覚経路 “軟骨伝導”気導・骨伝導とは異なる3つ目の聴覚経路

TECHNOLOGY

軟骨伝導とは
CARTILAGE CONDUCTION

500年以上前の15世紀から音が聞こえる経路として空気中の振動を聞く気導と骨から伝わる骨導の2経路は知られており、これを利用した多くの機器が発売されてきました。
一方、2004年に奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学の細井教授が耳軟骨に音声情報を含む振動を与えると気導や骨導と同程度に音声情報が明瞭に内耳に伝えられることを発見し、「軟骨伝導」、英語名を”Cartilage Conduction”と命名しました。
「軟骨伝導」は「骨伝導」の一種であるかのように誤解されがちですが、その聞こえのメカニズムや音伝達の性質、特徴は「骨伝導」とは全く異なります。これらの事は、聴覚実験で実証され、多くの科学論文で発表されています。詳しくは掲載論文を参照ください。
骨伝導音は、音(振動)エネルギーが頭蓋骨を介して内耳に伝わることにより聞こえる音で、音エネルギーは鼓膜や中耳を介しません。
一方、軟骨伝導は、音(振動)エネルギーが筒状の外耳道の外半分を形成する外耳道軟骨を振動させて外耳道内に気導音(空気の疎密波)を生成し、その気導音が鼓膜や中耳を介して内耳に達することによる聞こえの現象です。
このメカニズムの違いにより、軟骨伝導では心地良い周波数特性の音が得られたり、完全なステレオ感が得られる等、試聴によって気導音とも骨伝導音とも異なることが容易に体験できます。
軟骨伝導では、人が生来持っている鼓膜や中耳など重要な聴覚器の機能を用いた自然な音が得られます。また完全なステレオ感が得られる等、試聴によって気導音とも骨伝導音とも異なることが容易に体験できます。
私は軟骨伝導という医学的発見を医療機器に応用するだけでなく、一般の人が使用する通常の音響機器やコミュニケーション機器として広く世界の人々のもとに届けられることによって、発見の価値が大きくなると考えています。
HPでは、私の研究を通じて、皆様方に軟骨伝導とは何か?世間でよく聞く「骨伝導」とはどこが異なるのかなど、研究結果に基づいて説明させていただきます。
特に頭蓋骨が振動する「骨伝導」と振動しない「軟骨伝導」は全く異なる経路ですので、この点をご理解いただけたら幸いです。

  • 気導3DCG

    気道経路

    音源は耳の外にある。

  • 気導3DCG

    骨伝導経路

    骨が振動、鼓膜を通過しない。

  • 軟骨伝導3DCGスマートフォン用

    軟骨伝導経路

    音源が耳の中にできる、骨は振動しない。
    鼓膜を通過する自然な音。2004年に発見。

軟骨伝導の発見から現在

HISTORY

軟骨伝導発見者

軟骨伝導発見者

細井 裕司
Hosoi Hiroshi

公立大学法人奈良県立医科大学 理事長・学長
一般社団法人MBTコンソーシアム
(会員企業226社)理事長

公立大学法人奈良県立医科大学 理事長・学長
一般社団法人MBTコンソーシアム(会員企業226社)理事長

  • 専門分野

    聴覚医学、臨床耳科学、住居医学

  • 役職等

    日本聴覚医学会軟骨伝導聴覚研究会代表世話人
    日本音響学会軟骨伝導調査研究委員会委員長
    全国医学部長病院長会議理事
    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会参与
    一般社団法人奈良県医師会医学会会長
    けいはんなリサーチコンプレックス推進協議会会長

  • 歴任

    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座教授
    日本耳鼻咽喉科学会代議員
    日本聴覚医学会理事
    日本耳科学会理事
    日本小児耳鼻咽喉科学会理事等
    第1回小児耳鼻咽喉科学会会長
    第12回日韓耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会会長
    第55回日本聴覚医学会会長
    けいはんなリサーチコンプレックスオーガナイザー等

私は、「医学的発見・研究は論文執筆で終わっては人々の役に立たない。製品となってはじめて人の役に立つ。」という信念のもと、MBT(Medicine-Based Town、医学を基礎とするまちづくり)構想を立ち上げました。(MBTコンソーシアムで検索ください。)
この発想のもとになったのが、2004年の新聴覚「軟骨伝導」の発見で、NHKのサイエンスゼロにおいて、「450年ぶりの発見」と紹介されました。
聞こえの経路として気導と骨伝導は450年以上前から知られており、その聞こえのメカニズムを応用した機器は、すでに多く製品化されています。
私は軟骨伝導という医学的発見を医療機器に応用するだけでなく、一般の人が使用する通常の音響機器やコミュニケーション機器として広く世界の人々のもとに届けられることによって、発見の価値が非常に大きくなると考えています。
このページでは、私の研究を通じて、皆様方に軟骨伝導とは何か?世間でよく聞く「骨伝導」とはどこが異なるのかなど、研究結果に基づいて説明させていただきます。
特に頭蓋骨が振動する「骨伝導」と振動しない「軟骨伝導」は全く異なる経路ですので、この点をご理解いただけたら幸いです。

  • 2004年

    細井が軟骨伝導の仕組み及び応用製品について特許の中に記載

  • 2016年

    アメリカ音響学会において軟骨伝導の基調講演

  • 2018年

    米ハーバード大学にて軟骨伝導の講演
    全インドネシア耳鼻咽喉科学会にて軟骨伝導の講演
    ジャカルタ軟骨伝導ワークショップにて講演
    豪クイーンズランド大学にて軟骨伝導の講演
    豪ラトローブ大学にて軟骨伝導の講演

  • 2019年

    米ミシガン大学と奈良県立医大が軟骨伝導研究の共同プロジェクト開始(包括連携協定を締結)
    インドネシア国立大学医学部で軟骨伝導補聴器の治験を開始

軟骨伝導方式の特徴
FEATURES

  • 周囲の音が聞こえて音漏れがない

    外耳道内で発生する音源効果で周囲の音とも分離され、かつ、同時に聞こえることが出来ます。また、音源デバイスの寸法、駆動消費電力が小さく、発生する音源が外耳道内にあるため外部への音漏れはほとんどありません。騒音などの不快な周囲の音を聞きたくない場合は、耳穴を閉じることでより鮮明な音を聞くことが出来ます。

  • 楽な装着感

    装着時に圧迫感や重みが感じられません。また、軟骨伝導では、音源デバイスを耳介軟骨のどの部分に軽く触れただけでも十分な音量で聞こえますので、長時間装着しても耳に対するストレスが無い構造が可能です。

  • ステレオ感と深い音質感

    外耳道内で発生する音源以降は通常の気導と同じ音の伝わりですので、ステレオ感が得られます。また、外耳道内の音源効果により一般の気導音に比べ深い音質感が得られます。

  • 極小サイズ

    音源デバイスの振動エネルギーが小さくても耳介軟骨を振動させることが出来るので、従来の骨伝導イヤホンに比べ音源デバイスの大きさや駆動消費電力を小さくすることができます。

骨伝導との違い

DIFFERENCE

軟骨伝導方式は音源デバイスを耳介軟骨部に軽く触れるだけですので、骨伝導方式の様な強い圧着は不要です。在宅勤務等で頻度の多いリモート会議や、国際会議の同時通訳等、長時間に渡り耳に装着してもストレスを感じません。

側頭骨に圧着して大きな頭蓋骨を振動させる骨伝導方式と違い、僅かな振動で音を伝えることが出来るため骨伝導方式に多い音漏れはほとんどありません。また、音源デバイスのサイズが小さいため、骨伝導方式に比べて駆動に必要な電力が小さく消費電力も抑えられます。

耳介軟骨部分に軽く接触するだけで軟骨伝導効果が得られますので、骨伝導方式より着脱が容易な設計が可能です。

ステレオ感を得るためには、異なる音情報が別々に左右の内耳に到達する条件が必要です。骨伝導方式では頭蓋骨の振動に融合されるので気導音ほどのステレオ感は得られません。軟骨伝導方式は左右の内耳に入る音情報は別々であるため、従来のイヤホンやヘッドホンと同様の完全なステレオ感が得られます。

骨伝導との比較

骨伝導 軟骨伝導
1側頭骨の振動 必須 不要
2振動子による圧迫 必須・圧着(痛い) 必須・接触(痛くない)
3消費電力
4両耳聴(ステレオ感、方向感など) 小(左右の蝸牛入力は同位相・同強度) 大(左右の蝸牛入力は同位相・同強度)
5音漏れ
治験の結果 骨伝導イヤホン補聴器装用者41名中39名が軟骨伝導イヤホン補聴器に乗り換えた。
(Otology&Neurotology 39:65-72, 2017)

骨伝導は十分にはステレオになりません。軟骨伝導は完全なステレオサウンドです。
骨伝導イヤホンが2つあっても頭蓋骨で融合して1つの波になります。
ステレオ感を得るには、左右の蝸牛に入る音情報に位相差と強度差が必要です。
骨伝導では振動子が左右に2つあっても頭蓋骨で融合するので、位相差と強度差が生じず、ステレオにはなりません。
【軟骨伝導のステレオ感、方向感の研究論文】Applied Acoustics 74:1234-1240, 2013 International Journal of Audiology 59:891-896, 2020

清潔・健康イヤホンの話

カナル型(耳閉鎖型)イヤホンとの比較

気導(耳閉鎖型) 軟骨伝導
1清潔か、耳垢貯留か 耳垢貯留、清拭難 清潔・完全清拭
2耳の病気の原因 外耳道炎、真菌症 病気なし
3耳のつまり感 あり なし
4周囲の音が聞けるか 聞けない 聞ける
5食事時 咀嚼音が不快 咀嚼音響かない
6水中での聴取 不可 クリアに聞ける
7耳ツボ刺激効果 なし あり
8耳裏からの音入力(メガネ型) 不可 可能
9審美性(形) イヤホンの形
(穴あり、凹凸あり)
自由
(穴、凹凸のない完全球形やディスク型など)

インナーイヤー型(耳開放型)イヤホンとの比較

気導(耳開放型) 軟骨伝導
1清潔か、耳垢貯留か 耳垢貯留、清拭難 清潔・完全清拭
2音漏れ 外耳道炎、真菌症 病気なし
3低音域の音圧 あり なし
4騒音下での対策(音量、S/Nの改善法) 聞けない 聞ける
5水中での聴取 咀嚼音が不快
6耳ツボ刺激効果 不可
7耳裏からの音入力(メガネ型) なし
8審美性(形) 不可
根拠論文・備考 Appl Acoust 2013; 74:1234-1240.
インナーイヤー型より軟骨伝導の方が低音域、高音域ともによく出ている。音漏れも少ない。
Laryngoscope2014; 124:1214-1219.
軟骨伝導イヤホンでは外耳道を閉鎖することによって、音量が増強する。耳穴を指などで閉鎖すると
S/Nが瞬時に改善する。気導では耳穴を閉鎖すると音量が減少する。

学術論文

ACADEMIC PAPER

No タイトル
1 Hosoi H, Yanai S, Nishimura T, et al.  Development of cartilage conduction hearing aid. Arch Mat Sci Eng 2010; 42:104-110.
2 Shimokura R, Hosoi H, Nishimura T , et al. Aural cartilage vibration and sound measured in the external auditory canal for several transducer positions. JTD(J of Temporal Design in Architecture and the Environment) 2013; 12(1): 137-143.
3 Nishimura T, Hosoi H, Saito O, et al.  Benefit of a new hearing device utilizing cartilage conduction. Auris Nasus Larynx 2013; 40:440-446.
4 Shimokura R, Hosoi H, Iwakura T, et al.  Development of monaural and binaural behind-the-ear cartilage conduction hearing aids.  Appl Acoust 2013; 74:1234-1240.
5 Shimokura R, Hosoi H, Nishimura T , et al. Cartilage conduction hearing. J.Acoust.Soc.Am. 2014; 135(4):1959-1966.
6 Nishimura T, Hosoi H, Saito O, et al. Is cartilage conduction classified into air or bone conduction? Laryngoscope2014; 124:1214-1219.
7 Morimoto C, Nishimura T, Hosoi H, et al. Sound transmission of cartilage conduction in the ear with fibrotic aural atresia. J Rehabil Res Dev 2014;51(2):325-332.
8 Nishimura T, Hosoi H, Saito O, et al. Cartilage conduction is characterized by vibrations of the cartilaginous portion of the ear canal. PLOS ONE. 2015; DOI: 10.1371/journal.pone.0120135
9 Nishimura T Hosoi H, Saito O, et al. Cartilage conduction efficiently generates airborne sound in the ear canal. Auris Nasus Larynx. 2015; 42:15–19.
10 Shimokura R, Hosoi H, Nishimura T, et al. Simulating cartilage conduction sound to estimate the sound pressure level in the external auditory canal. Journal of sound and vibration. 2015; 335:261-268.
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